「サラリーマンでは味わえない、新たな分野に挑戦したい。」新見花卉部会を頼りに、農業の世界に飛び込んだ佐藤亮さん(43)は、4年前に新見市へ移住し、リンドウの専業農家となりました。順調だった昨年の初出荷とは一転、今年は夏の異常な暑さに加え、物価高の影響も重なり、収量減と販売不振という苦難に直面。それでも「楽しむこと」をモットーに、最後まで前向きに収穫に臨んでいます。
15年間勤めた会社で仕事をやり遂げた達成感がありました。「次は自分が経営者となって、ひと花咲かせたい」と転職を模索。土を耕し自然と向き合う農業というものづくりに、他業種とは異なる魅力を感じました。妻もその思いを受け入れ、生まれ育った広島県福山市をはじめ、近隣の自治体に情報収集のため奔走しました。
研修制度や補助金が充実していたのが新見市でした。特産作物のブドウ「ピオーネ」、トマト、リンドウを栽培する現地をそれぞれ見学。いずれも産地が確立されており、技術面や販売面の不安はありませんでした。同部会で新規就農の先駆けとして経験と実績を積み上げてきた、当時の部会長・奥山亮さんにほれ込み、「やるなら早い方がよい」という一言が決め手となり、そのまま研修に入りました。
ホームグラウンドは、奥山さんの近くにこだわりました。1年間の研修で慣れた土地に加え、すぐに相談できる安心感があったからです。実際に栽培してみて分からないことや予期せぬ事態など、その場その時に必要な適切な手段やアドバイスを求めました。
「自分が育てた花が商品になったときは率直にうれしかった」と初出荷の喜びを振り返ります。規模拡大も果たし、今年は35㌃で2万8000株を栽培。18万本の出荷を見込んでいたが、8割程度にとどまりそうだといいます。「困った時も一人ではない。部会には志を共にする同世代の仲間がいるから頑張れる。まずは安定経営の基盤を整え、産地の一員として役割を全うしたい」と笑顔で話します。





